ヤイリギターができるまで
ヤイリギターの製品は、多くのクラフトマンたちの技の結集によって生み出されます。
厳選した木材から1本1本、手仕事で丁寧に。美しい音色とフィット感、丈夫さにこだわり、思いを込めて作っています。
木の乾燥
Natural seasoning
よいギターの条件において、長期間十分に乾燥させた良材は欠かすことができません。まずはコア、ハカランダ、ローズウッド、スプルースなど、すべての木材を屋外で自然乾燥させ、吸湿や変形がしにくい材料にします。その後、保管庫に移し、桟積みの状態で寝かすこと3~10年、含水率が15~20%ぐらいになれば、ギターの材料として使い時。機械で仕上げ乾燥をし、工房へ運びます。
表板・裏板のブックマッチ接合
Bookmatching
1枚の板をスライスし、左右対称に接合することで美しい木目を出す「ブックマッチ」という手法で、表板や裏板を接合します。接着剤は、有害化学物質を含まない日本の伝統的な接着剤、膠(にかわ)を使用。この膠の取扱いや、ねじを締める時の力加減は長年の経験と勘を必要とするデリケートな作業です。
トップ材の選択
Grading and Selecting
熟練のクラフトマンが画取りした材を1枚1枚見て、木目やフシ、シミなどの状態からランク分けをしていきます。“コシ”や“密度”も重要なポイント。こうした総合的な判断でトップ材は文字通り、適材適所に割り当てられます。端にフシがあるものは小さなギターに使用するなど、木材の有効活用にも努めています。
ブレイシング、スキャロップ
Scalloping
力木、ハーモニックバーと呼ばれる補強材をあしらい、表板に強度を持たせるブレイシング、そして音質を調整するためにブレイシングを削るスキャロップを行います。ブレイシングは表からは見えませんが、縁の下の力持ちともいうべき存在。弦の張力も考慮しながら、丁寧に仕上げていきます。
サイド材の曲げ・接合
Bending
職人が工夫を凝らしてカスタマイズした特製のベンディングマシーンを使用し、サイド材をひょうたん形に曲げます。曲げ加工が終わった2つのサイド材とカーフリングは専用の型にセット。フォルムを固定するためのクランプを掛け、膠で強力に接合します。
サイド材・トップ材・バック材の接合
Body gluing
サイド材とトップ材・バック材をそれぞれ膠で接合します。まず、サイド材にブレイシングの位置をチョークでマーキング。それぞれの材がぴったり噛み合うよう正確に溝を切り、プレス機にかけて固定・接着します。続いてトップ材・バック材も接合。ギターのボディ部分が誕生します。
バインディング
Binding
ボディの周囲を樹脂や木などでできた装飾材で、ぐるりと取り囲みます。バインディングは木の小口(側面)を隠す見た目の美しさのためだけでなく、表板や裏板の端を保護し、吸湿を防ぐ役目も。職人の手で溝を削り出し、微調整しながら丁寧に巻いていきます。
インレイの埋込み
Inlay
ヘッドを彩る貝殻の螺鈿(らでん)細工や、インレイの埋め込みも、一つひとつ手作業で実施。オーダーメイドでは、世界にひとつのデザインでインレイワークを施すこともできます。
ネックの仕込み、角度調整
Neck jointing
ボディ側を凹、ネック側を凸の形に削り、組み合わせる伝統的な「ダブテイル」加工を基本に、ヤイリ独自の構造を採用した「エクステンド・ネック」は長年の使用にも耐える安定したジョイント方法です。わずかな角度の違いが音質、演奏性、耐久性に影響する重要な工程で、作業には熟練を要します。
ネックシェイプの調整
Neck shaping
ネックを握った感触は弾き心地に大きく影響するもの。ヤイリギターでは、丸みのあるタイプ、三角形に近いタイプ、かまぼこ形と、大きく分けて3種類のネックを製造しています。担当クラフトマンが使う小刀やカンナなどの柄は、使いやすさにこだわった手作り。もちろん、毎日の手入れも欠かしません。
塗装前の準備
Sanding
何種類ものサンドペーパーや研磨機を駆使し、ギター本体の表面をなめらかにしていきます。研磨が終わったら塗装部屋へ。塗装が不要な部分をマスキングテープで覆ったら、準備完了です。
塗装
Finishing
はじめにハケを使用して下地を整えてから、スプレーガンで塗装していきます。ギターの音色を響かせるためには塗装をできるだけ薄く施すのが理想的。塗っては研磨する作業を繰り返すことで薄い塗膜を作り、見た目も音も美しく仕上げていきます。
フレット打ち込み
Fretting
音程を決める役割を持つフレット。わずかな高さもばらつきも出ないよう、確実に指板に打ち込んでいきます。先に専用の機械で仮打ちし、状態を確認しながら1本1本、手作業で丁寧に。ヤイリギターでは、ネックセットをして塗装をした後にフレットを打ち込む、"後打ち"で精度の高い指板面を作っています。
シーズニングルーム
Seasoning
湿度・温度を最適に調整した部屋で、ギターたちに、大音量の音楽を聴かせます。シーズニングは、いわばギターへの“胎教”。ボディに“鳴り”を覚え込ませるのです。
バフ
Buffing
塗り上がった塗装面をサンドペーパーで丁寧に研磨。さらにワックスをつけて回転するバフ布で磨き込み、鏡面のように美しいツヤを出します。
仕上げ
Assembly
塗装と磨きを済ませたボディに、ナットやサドル、ペグを取り付けます。ナット・サドルは個体の特性を見ながら一つひとつ丁寧に削り出し、フィッティングさせます。この後、ようやく弦が張られます。ヤイリギターの弦は表面をコーティング加工しているため錆びにくく、寿命が長いのが特長です。
サウンドチェック
Sound checking
ギターを1本1本、手に取り、ネックのそりや弦の高さ、弾き心地、オクターブピッチなどを確認。最適なセッティングにます。とりわけナットやサドルについては微調整して、入念に仕上げていきます。ピックアップ(マイク)が付いている場合は、その出力バランスのチェックも行います。
最終検品
Inspection
各工程で職人の厳しいチェックを経て仕上がったギターは、最後に厳正な検品が行われます。お客様のもとに出荷されるのは、これまでの全ての作業で、職人たちの厳しいチェックをクリアした製品のみ。完成品にはシリアルナンバー入りのラベルを貼付しています。